九六フィートの高さから

それとなく落下 相対速度は限りなくゼロ

実の距離

二日前、一人暮らしをするアパートに引っ越した。

荷物の運び入れ自体はすぐに終わって、部屋は割と短時間である程度形になった。

でもそこから足りないものを買い出しに行って整理したらもう夜も遅い時間になった。

でも頑張った甲斐あって、いい部屋、というか自分らしい、自分が落ち着ける部屋になった。

そのおかげであまり場違いな感覚にはならなかった。

でも自分の中でまだ場違いな言葉がある。

それは”実家”という言葉。

 

ついさっきまで自分がずっと生活をしていた家のことを”実家”と呼ぶのが、なんだかとても違う感じがした。

自分にとって家はずっとあの家だったし、そもそもインドアでおうち大好きな僕なので、家にたいする愛着は自分が思っているよりずっと強かった。

それは一人暮らしをはじめたいまだってまだ変わらない。

 

実家。

言葉の作りとしては、実という誠実そうな文字がくっついただけなのに、僕とあの家の距離がぐっと遠くなってなってしまった気がして、初めて「実家」と口にしたときは、その距離の感覚の急激な変化に動揺した。

 

一人暮らしがはじまった。

この家はなんなのか、この家がどういう場所になるのか。

それはここでのこれからの生活によって、一枚ずつ意味付けられてゆくものだから。

 

自分はどこにいるのか。