九六フィートの高さから

それとなく落下 相対速度は限りなくゼロ

2021

2021年に好きだったものの記録。

 

映画

  • マトリックス レザレクションズ』
  • 『リスペクト』
  • 『あのこは貴族』
  • 『私をくいとめて』
  • 夏への扉
  • 『映画大好きポンポさん』
  • 『まともじゃないのは君も一緒』
  • 『羅小黒戦記』
  • 『ヤクザと家族』
  • 『ドライブ・マイ・カー』

意外と映画館に行けた1年だったと思う。

年末に1年のベストを書くからどうしても新鮮な記憶のある作品が強くなってしまう自分だけど、なんとかそれを差し引くべく努めたつもりで、そのうえで『マトリックス レザレクションズ』がやっぱり良かった。前三部作も一作目しかまともに見ていなかったけど、IMAX上映の期限に駆け込む形で見た(『呪術廻戦0』の公開の影響)。それでもわかるような作りになっている。作品内でも自己言及されているように原点回帰だったから。

20年前の前三部作を「くそったれども」から取り戻すための新作という感じで、作り手側(監督だけでなくおそらく出演者たちも)の強く明示的なメッセージに感動した。ラストもすごく好き。

『リスペクト』は『ブルース・ブラザーズ』が大好きな身からすると、あの食堂で汚い格好で歌い踊っていたおばさんにこんな人生があったのかと重く鈍い打撃。エンドロールに移る本人の姿でけっきょく一番泣いた。

今年は邦画で好きな作品が多く、『私をくいとめて』『あのこは貴族』『まともじゃないのは君も一緒』なんかは特に響くものがあった。『私をくいとめて』については『ストーリー・オブ・マイライフ』といっしょに文章を書いた。

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『ヤクザと家族』は最後の磯村勇斗がいい。『夏への扉』はうまいこと現代設定で映像化しているし藤木直人がいい。

アニメ映画も何本か見ていて、『Away』とかも映像面白かったけど、アニメーションのすごさでは『羅小黒戦記』が群を抜いてすごかった。ディズニージブリって感じ。かわいらしいキャラがベタな設定で特に説明もないまま見たことない必殺技を繰り広げまくる。アイデアとアニメーション技術を湯水のようにぶちまけ続けててわくわくした。『ポンポさん』もすごくて、全部うまくいくぶち上げ「夢」物語で気持ちがいい。クリエイティブの人たちの労働環境に対する批判がないのはいかがなものかと思ったけど。

ワースト映画は『竜とそばかすの姫』です。細田守のことがそれなりに好きだからなんですが、ここ最近の作品には期待を裏切られて、怒りが湧くことが多くてしんどかった。細かい話はいっぱいできるけど、フラスコ飯店で編集担当した記事にまとまっています。

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『ドライブ・マイ・カー』について語る言葉をまだ持てません。

 

 

今年は音楽をあまり聴かない一年だった。なんでだろう。一つの理由に、自分は本を読んだり勉強したりしながら音楽を聴けないタイプだからというのがあると思う。

 

小説や本は映画のように何をいつ読んだか記録を取ってなくて、おぼろげな記憶しか持っていないけど、それでも今年いちばん印象に残ったのは町屋良平の『ふたりでちょうど200%』という小説。小学生時代の同級生で、溺れた/溺れるのを見たという記憶を共有している二人が大人になって再会する、という設定を同じくして、違う物語を4本の連作にしている小説。町屋良平の文体は、前から時間軸というか世界線が一定でない感じがあって、さらっと反実仮想を書いたりする人だったから、ある種転生もののようなこの連作の書き方には納得した。いかにも文学っぽい比喩表現などのレトリックレトリックした文章が苦手な自分だが、町屋良平の文章は理解したり共感したりする前に「身体がわかっている」ような感覚で読んでしまう。だからほんとうはわかっていないけどどんどん飲み込んでしまう感じ。それが何か知りたくてずっと読んでるのだと思う。

 

今年は就活にはじまり修論に終わった。来年からは東京で働きます。自分のナイーブさをどう扱うかという問いが見えてきた20代前半最後の一年だった。