九六フィートの高さから

それとなく落下 相対速度は限りなくゼロ

小さくて弱い透明な羽虫の夜

最近夜眠れない。そのうえ朝起きるのも苦痛。

どうにかならんもんかと思うけれど、どうにもならないらしい。

電気を消した暗い天井や壁を見たり見なかったりしながら、どうにもならないことをぐるぐる考えたり考えてるふりをしたりする。

暑いのが悪い。足の裏が火照ってたまらない。

部屋の空気がこもるので、寝るまでの間は窓を開けている。もちろん網戸は閉めてあるのだけれど、それでも法の目をかいくぐって小さな虫たちが侵入してくる。

かなり多い。でも窓を閉める方がきついので、そこは我慢している。

時たま晩御飯に飛び込んできたりするので、優しく殺す。

いくら優しくても殺しているので、ごめんね、と言う。

また殺す。ごめんね、と言う。

そろそろ窓を閉めようかなと思う。

 

枕にいつの間にか涎を垂らしながら考えるのは、いまのことと、将来のこと。

なんだかとても寂しくなってしまういまのこと。世の人たちはどうやって一人じゃなくなっているのか、わからない。なんて言いながら自分が動くことを放棄してることもわかってて、かっこわりーな、と思う。そりゃ眠れないわけだ。

将来のことはずっとずっと頭の割と目立つところに居座り続けているし、ちょっとずつ見えてきたり、やっぱりそうでもなかったりするけれど、なかなか決着はつかない。まだつけたくない、つけるのが怖い、というところもある。選択するのは怖い。だって選択したらもう一方は捨てないといけない。捨てるのは怖い。選ぶのは怖い。いまもまだ保留にし続けている。かっこわりーな、と思う。

 

自分のことはそんなんだけど、人の話を聞くのは好きだ。

誰かが考えていること、将来やりたいことの話を聞くのが好きで、よく尋ねてしまう。

彼はエネルギー問題解決に向けて研究者になろうと考えているし、彼女は大きなお家を建てるために1000万円プレイヤーになるべく親に借金してWスクールを始めたし、彼女はジャーナリストになろうと就活したけれどダメで彼女いわく「学歴ロンダリング」して院に進んだらしい。

みんなすごいなと思う。

僕はどうも薄情なせいか、気持ちを強いまま保つことができない。恋もできない。

 

かっこわりーな、と思う。

僕はもうすぐ二十歳になる。